風力発電施設におけるアンシラリーサービス

いわゆるアンシラリーサービス・ボーナス の導入は、風力発電施設が系統連系される際に系統の安全性を高めるインセンティブの役割を果たす。詳細は2009年7月11日に発効したシステムサービス令 (アンシラリーサービス令)*)に規定されているが、以下にその一部を紹介する。

*)
ドイツ語ではSystemdienstleistungen (システムサービス:直訳)であるが、周波数維持、電圧維持、無効電力や有効電力の制御を意味
するため、敢えてアンシラリーサービスとする。

技術的要求事項

アンシラリーサービス令により、従来の化石燃料発電所で実施されている課題が風力発電施設に対しても義務付けられることになった。技術的な要求事項の構成においては、主にBDEW(Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft:連邦エネルギー・水管理連合)の技術基準が引用されている。中圧系統への連系については、2008年6月発行の”発電設備中圧系統連系技術要件ガイドライン”からの規定が適用される。高圧系統への接続においては、トランスミッション・コード2007の規定 (2007年8月付ドイツ送電系統運用者の系統及びシステムルール)で、アンシラリーサービス令の附属書に記載されている要求事項が満たされなくてはならない。

風力発電施設のシステム統合に対する要求事項は、2009年1月1日以前に稼働開始した施設と新規の施設との間で異なっている。

旧施設については、周波数維持や系統の故障の際の動作、そして供給復帰に対する特定の要求事項が満たされればボーナスが支給されることになっている。新規の設備においては、これ以外に電圧維持や無効電力の供給に対する要求事項が課せられている。

周波数維持に関し、風力発電設備は最大1分以内に有効電力が下げられるような機能を有してなくてはならない。それにより風力発電設備も、系統の周波数が50 Hzで安定するように貢献する。新規の風力発電設備は、さらに電圧維持に対しても貢献しなくてはならず、どんな運転ポイント(モード)においても特定の無効電力が供給できるような状態でなくてはならない。

系統で故障が生じた場合、その際の電圧崩壊を出来るだけ局地的に抑えるために、まず風力発電施設は系統から切り離されないようにし(FRT:Fault Ride Through)、且つ無効電力を供給できなければならない。これらの技術的要求事項の順守は、2010年6月30日以降に設置された施設に対して、FIT支払いの前提条件となる。これらアンシラーリーサービスに関わる要求事項の順守は、既定の証明書の提示並びに専門鑑定人によって証明されなくてはならない。証明書を発行する者は、DIN EN 45011:1998に基づき認可された認定機関により認証されなくてはならない。

アンシラリーサービス・ボーナス

アンシラリーサービス令の順守に伴うコストアップを補償するために、施設運用者は特別にボーナスを受給できる。このアンシラリーサービス・ボーナスは、オンショアの風力発電施設に対して適用され、2009年1月1日以降に稼働している全ての施設に対して0.5 ct/kWhが支給される。請求権は、旧施設が高性能の新規施設によってリパワーリングされる際にも適用される。両ケースにおいて、いわゆる当初補償額のみが引き上げられる。当初補償額が支払われる最低5年の期間が経過した後は、アンシラリーサービス・ボーナスの請求権も消滅する。2001年12月31日以降に稼働している施設に対してのボーナスは、0.7 ct/kWhである。受給の前提条件は、要求事項が装置の後付けによって2011年1月1日までに満たされることである。請求権が発生するのは、施設がアンシラリーサービス令の発効後 ”初めて” 新要求事項を満たしてからである。アンシラリーサービス・ボーナスは旧施設に対して5年間支給される。

アンシラリーサービス令の施行は、供給管理に対する新たな規定のように、再生可能エネルギーを系統に支障をきたすことなくインテグレートするために重要な一歩となる。当該法令の順守は、2010年半ばから新規の施設に対して義務付けられ、固定価格買取制度の前提条件となる。

また既存施設に対して装置を後付けしなくてはならないため、アンシラリーサービスの機能を持たせるための装置を販売する会社が設立される等、一つの市場を形成している。

出典:Institut fur Energie- und Wettbewerbsrecht in der Kommunalen Wirtschaft e. V.
(EWeRK)

関連資料:アンシラリーサービス令(英語版ドラフト)

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