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欧州における代理商の存在と役割−販路開拓の手掛かりとなるか (その1)

外国市場に新規参入し、販路を開拓・拡大する手段は多岐に渡り、その中から企業がどの方策を採用するかは、その企業とそれが売り出す商品の関連市場における状況に大きく左右される。

代表的な手段だけでも、

  1. 直接販売
  2. 現地販売要員の雇用
  3. 代理商への委託
  4. 代理店や輸入業者への委託、
  5. 商社の利用
  6. ジョイント・ベンチャーの設立
  7. ライセンス供与
  8. フランチャイズ契約
  9. 生産拠点/現地販売拠点の創設

などと枚挙に暇が無く、企業は、その中から自身にとって適切なものを選択する必要がある。

 参入先の国や地域に支店・営業所を開設し、商業使用人を派遣した上で直接販売などの方策を用いるのは、新規参入の際のオーソドックスな手段と言えるだろう。競合企業が少ない市場での事業、ブランド製品や、特殊な技術説明のために顧客との緊密なコンタクトが必要な製品の販売に直接販売は適している。または、販売チェーン、スーパーマーケット、通販会社などと取引をする大口のエージェンシーへの販売も同様である。もちろん、商品を大量にかつ安定して販売することができるのであれば、直接販売は大きな利益率を期待できるシステムである。しかし、その安定と参入市場への定着には相当の時間と労力がかかる。市場でしっかりと地歩を固めていない企業にとって、直接販売は、大きなリスクを伴い大抵の場合適切な手段ではないかもしれない。

 此の様に、高額の初期投資が期待される直接販売の敷設は、厳しく企業利益の最大化を模索する民間企業にとっては、いささか非効率である様に思われる。企業戦略の決定に際し、様々な要素を考慮に入れ最適な選択を導きだすことは容易なことではない。多様な方策の個々のメリット・デメリットを熟慮した上で、それらを比較し判断しなくてはならないからである。

 以下では、日本にはあまり馴染みがないが、欧州においては大きな役割を担っている代理商 (英:Commercial Agency, 独:Handelsvertreter) について説明したい。いかに経費を節約して収益の増加を実現させるかを課題とする企業にとって、費用とリスクを軽減し、現地の情報と幅広いコネクションを持つ代理商は魅力的な選択肢になりうるのではないだろうか。

 代理商とは、依頼元企業の代理として商品の販売や購入、契約の交渉・締結に関して、一定期間にわたり継続した権限を付与された、自立した商人である。 彼らは、限られた地理的範囲の市場において、特定の分野に特化した形で、主として中小企業を相手に、商品売買の仲介や、市場への速やかなアクセスと情報の提供を行うことで、コミッション(手数料)を支払われる。なお、以下の特徴を持つものは、代理商の定義の範囲外にあるものとする。

• コミッション(手数料)を支払われない場合
• 商品取引所を営む、もしくは原料市場に従事している代理人
• ある企業あるいは機関の使用人で、それらのために販売員として行動している場合。
• 破産企業の破産管理人、管財人、破産管理人および管財人、生産人もしくは差し押さえ人
• 政府や行政機関に対する援助機関
• 他の事業仲間のために法的に商売をする権能を有するもの

以上の除外条項を含めた定義は、欧州において、立法にも適用されるものである。これ以外にも、上記の定義に部分的にあてはまるものなど、代理商に類似した商業主体が存在する。それゆえ、求められている商業人に関する詳細な情報とその選択の法的な意味合いを理解することが必要となる。 

以下に、代理商と類似した中間業者的な機能をもつ商人を例示する。

  1. 外交販売員・巡回セールスマン(The traveling salesman/ Der Handelsreisende)
    企業の名前でその企業の為に働く。従業員として企業によって雇用されており、給料をもらっている。自身のスタッフを雇用することや、他の企業を代表することなどは出来ない。また、あらゆる金銭的なリスクは負わない。 
  2. ブローカー(The Broker/ Vermittler)
    買い手や売り手のどちらをも代理しない。仲介業務を通じて、それら双方より報酬を受け取る。
  3. 仲買人・代理店・委託売買人(The Commission Agent/ Der Kommissionshändler)
    買い手と売り手の中間業者として、しばしば販売権も有する独立した業者であることから、代理商と類似点をもっている。しかし、一般的に企業により利益をもたらすために一致した契約の当事者となる。また、契約によって企業に拘束を課すことができず、取引を成立させるために別の契約を締結する。 
  4. ディストリビュータ・販売流通業者・卸売り業者(The Distributor/ Der Großhändler) 
    ある特定の商品を販売する権利を付与された独立した業者であり、商品の所有権ももっているため、自身で販売価格を決定できる。しかし、そのために金銭的なリスクを負っている。 

代理商と外交販売員・販売セールスマンの比較

外交販売員・
セールスマン
ブローカー 仲買人・代理店・
委託売買人
ディストリビュータ・
卸売り業者
  代理商  
取引先 一社 複数 多数 多数 複数
企業のリスク負担 大いにある ある ある ほぼない ある
企業の決定権 大いにある ある ある ほぼない ある
企業に対する自立性 まったくない ある ある 大いにある ある
コスト 高い 低い 低い 低い 低い

 代理商と依頼企業の関係は、双方とも独立した主体同士であり、企業は代理商の商業活動に拘束力をもつことは困難であるため、本質的に相互の信頼関係に基づく個人的なものである。その理由から、代理商の候補とは、契約締結以前からの接触と人間関係の構築が不可欠である。そのため、契約締結以前からの、代理商との接触と人間関係の構築が不可欠である。しかしながら、代理商にも客観的なメリットとデメリットがあることを忘れてはならない。

代表的なメリットは以下の5点である。

  1. 原則的には、依頼企業は代理商に対してコミッション(手数料)を支払うのみであり、これは参入にかかる費用リスクを大幅に軽減する。
  2. 事業を通じて、依頼元企業が顧客に対する責任と、価格決定や販促活動、配達や販売後のサービスなどに関する重要事項の決定権を保持する。
  3. 代理商は一定の地理的地域で活動しているため、多くの現地情報とコネクションを保持しており、彼らとの取引を通してこれらにアクセスできる。
  4. 代理商は、顧客と同一の言語を話し、顧客の質問や問題に対する適切なアプローチを可能とする。
  5. 多くの代理商は特定の専門分野に特化して業を担っている場合が多く、彼らからの専門的なフィードバックや助言は、依頼先企業の製品開発の一助になり得るのである。

代表的なデメリットは以下の5点である。

  1. 初めに行う代理商の選定が適切で無かった場合にも、一定期間をおかなければ、その代理商が自身のビジネスにとって効果的であるかどうか分からない。
  2. 代理商契約の根本にあるのは、代理商と依頼企業との信頼関係であるため、依頼者は、代理商との契約解除の際に一定の好意的な賠償(市場開拓代金の支払)を行う可能性があることを考慮しておかなくてはならない。特に、代理商の死亡などによる不測の事態において好意的な補償(市場開拓代金の支払)をする場合がある。
  3. 代理商への過度な依存によって、依頼先企業が市場での情報収集を怠る傾向がある。
  4. 代理商と依頼元企業の関係の中で、同一代理商による、その企業の製品と競合他社の製品の取り扱いの差による、摩擦・不和が生まれる可能性がある。
  5. 製品のシェアが拡大した際に、特に地理的な市場範囲が適切に規定されなかった場合、独占状態が生じ競争法に抵触してしまう場合があることも忘れてはならない。

 当然ながら以上に羅列した一般的なメリット・デメリット以外にも様々な要因が存在する。また、製品市場、地理的市場によってもそれぞれ異なることを考慮する必要がある。

 もちろん日本においても代理商は存在し、欧州におけるそれが全てと言うわけではない。しかし、日本の代理商の社会的な定義と彼らをめぐる法整備の状況・商習慣などは欧米のそれと大きく異なる。欧州と日本の代理商に関する差異の中でも、頻繁に問題となってくるのは、代理商と依頼企業との契約解除の際のトラブルである。以下では、ドイツと日本の比較を通してその差異を示したい。

 商業にとって決定的に重要な販売権は、日独においてその基本概念から実地における実際の法運用まで大きく異なる法的領域である。「販売権」とはある企業が作っている商品(又はサービス)を、その企業に代わって販売する権利の事で、代理商およびそれに類似する商人に対して非常に重要と言える。 

 以下では、もっぱら代理商(Handelsvertreter)と販売商(Vertragshändler)、すなわち卸売業者・小売業者・代理店等の総称、を引き合いに出す。簡単に言うと、代理商は、特定の企業に対して継続的に商売を行い、それによってコミッション(手数料)を得る。対して、販売商は、自身の名前と特定企業の自身の製品で商業を行い、それらの転売・再販売によって利益を得ている。ドイツの商法は(HGB)、EGの指針にそって、解約通知期間や補償請求(市場開拓代金請求)に関する詳細な保護条項によって、代理商の商業地位を保証している。また、特定の条件の履行によって上記の代理商規定並びに販売商が似た様な形で適用される。加えてドイツの商業構造は日本のものよりもシンプルであることから、代理商ならびに販売商などの参画者の法的関係は、比較的明確になっている。

 対して、日本の商業実務は極めて不透明であり、代理業務における法的関係が契約上で合意されることが稀な、いわゆるグレーゾーンをもつ。特定の産業においては、販売チェーンにおける幾つかの中間業者の存在が更に小売価格の高騰をもたらしている。経済的に強い企業が不都合な条件、たとえば不都合な価格の変更などを課することによって、ますます多くの代理商と販売商が販売チェーンから閉め出されている。代理商に関しては、日本の商法ではほとんど言及されておらず、それに加えて参画者の商業条件が契約上では、めったに同意されない。日本において、これに関連した法的領域が依然として一般的に認知されてないことから、代理商と販売商(卸売業者・小売業者・代理店等)はよく総称して代理店と記される。更に、日本には、ドイツやEG法での、損害賠償義務の賠償請求に関する法律や法規則が存在しない。幾つかのわずかな、企業に損害賠償支払いを課する法規則は存在するが、基本的には、代理商と販売商は損害賠償請求権を持たない。

 これらの事例はその都度、個々に特殊であり一般化には困難が伴うが、企業は忠実と信頼の原理にのっとり、代理商と販売商の負う損害を最小限に食い止める責任を負っている。企業が適切な解約告知期間を設けることを怠ったり、または契約関係を代理商や販売商にとって不都合な時期に解約した場合には、事情によっては企業は損害賠償責任を負う必要がある。これらの不明確さからみても、代理商や販売商にとってのみならず、企業にとっても、具体的かつ理性的な契約は、欠陥のある法的安全性に対処し、グレーゾーンを明らかにする為の大きな助けとなるだろう。これは特に、ほとんどの場合日本のこのような商習慣を見知っていない外資系の企業に言える。

 此の様に、代理商ならびに販売商に関連する商習慣と法整備の不十分さは、日本に参入する外国企業だけでなく、欧州市場に参入する日本企業にとっても、誤解を生むリスクが高まる可能性がある。自国と参入市場における法と商習慣の違いを理解することは、ビジネスの成功にとって大切な要素であると言える。 

 では欧州における代理商を取り巻く状況はどのような特徴をもっているのであろうか。欧州で代理商が大きな役割を果たしている理由や、彼らが具体的にどのような方策をとって市場の中での自身のプレゼンスを拡大してきたのか、に着目したい。

  欧州には、代理商の利益と権利を代表する代理商協会が存在し、この組織を通して本来個人で活動する代理商の知識・コネクションを集合化し、より効率的な運営を可能としている。小規模での経営が多数を占める代理商達が、代理契約の締結・履行およびその後の法的な関係において、自身の権利と安全を担保すべく、欧州各国に代理商協会が結成されたのである。また、これら代理商協会にはありとあらゆる商業分野の代理商が集まっており、その結成は彼らの専門知識・経験、そして信頼する顧客などのネットワークを通してよりビジネスを円滑化しようという試みでもあったと言える。

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図:市場における代理商の位置づけ、出所:CDHのPPTファイルより

 前述の代理商協会は、CDH (Die Centralvereinigung Deutscher Wirtschaftsverbände für Handelsvermittlung und Vertrieb、英語名:National Federation of German Commercial Agencies and Distribution) と称され、1902年に設立された。この中央組織は、現在、ドイツ各州に所在する13の代理商協会を統括する機関で、あらゆる部門からおよそ15,000人の商業仲介業者によって構成され、実に60,000の代理業務が行われている。もちろん、その他の仲介業務を行う商業主体(小売り業者・卸売り業者など)も組織の構成員であるが、代理商が多数を締めている。販売会社への枠組み作りへの参画と、影響、包括的なコンサルティング、情報とサービス提供への準備という二つの目的軸をもっている。2010 年には、実に総額約1,750億ユーロに達する物量を取り扱い、自身の売上げだけでも50億ユーロを誇っており、国内流通の30%に関わっている。この様に、統括的な組織の存在により大規模かつ迅速な代理商業務がドイツ国内において可能となり、その結果彼らの市場における重要性が増したのである。 

 また、ドイツの代理商は、近年外国企業との取引の拡大にも重点をおいている。2010年のCDHが発表した統計結果によると、代理商への依頼企業の実に5.4%が外国企業であり、取引における外国企業の割合は日を追うごとに増している。現在ではすでに半数の代理商がすくなくとも1社の外国企業の代理業務を行っている。代理商も今後の顧客獲得のために、外国企業を視野に入れていることから、彼らを通したドイツ市場への新規参入の流れはますます加速していくと考えられる。欧州においては、これらの協会を通じて企業と代理商の出会いと、ビジネスの発展をもたらすインフラが整備されていると言えよう。各州の代理商協会のインターネットページや彼らが参加するメッセなど、代理商と企業の出会いの場が確実に確保されているのである。

 ここまで、代理商の定義から代理商への具体的なアクセスまでを説明してきた。もちろん代理商は外国市場への新規参入のための1つの選択肢にすぎない。しかし、上記のように、かれらの存在と役割には興味を惹かれるだけの価値があると考える。この記事が少しでも、代理商の認知と理解に繋がったと言うことを願う。

⇒ 【欧州における代理商の存在と役割−販路開拓の手掛かりとなるか (その2)】に続く

(引用・参照)

  1. Existenzgründungsinformation für Handelsvertreter/IHK Rhein Necker
  2. Leitfaden für Handelsvertreter/ Industrie- und Handelskammer Südswestachsen Chemnitz- Plauen- Zwickau
  3. 在独日経企業ビジネスマンにとって必要な初歩法律知識
  4. Checkliste 30: Der Handelsvertretervertrag/
  5. Vertriebsrecht in Japan
  6. Merkblatt Handelsvertreter/ Industrie- und Handelskammer Dresden
  7. „AUSGEWÄHLTE FRAGEN ZUM AUSGLEICHANSPRUCH DES HANDELSVERTRETERS“/ Universität Wien
  8. 商法上の代理商に関する考察
  9. CDHのホームページ
  10. 代理商紹介パンフレット(英語版)
  11. 代理商目録での検索サイト
  12. バーデン=ビュッテンベルク州の代理商検索サイト
最終変更日時 2013年7月16日9:58 PM