ベルリンの公衆トイレにバイオトイレ?
2017年10月24日付け『ベルリーナー・ツァイトゥング』の記事で、ベルリン都市州が公衆トイレに「バイオトイレ」導入を検討中と報道された(出所:『Berliner Zeitung』紙)。
「バイオトイレ」または「乾式トイレ」とは、水を使用せず、汚物をコンポスト化する形式で、ベルリン都市州の環境担当Jens-Holger Kirchner氏(同州連立与党、緑の党)によれば、「人気が上昇中」で「省資源で環境に優しい」とのことであった。しかし問題は費用で、従来型に比べて運用費用は高額、設置費用だけを見れば安価ではあるが、なんと10年で代替更新が必要というものであった。あれから約10か月が経過した今、状況はどうなっているだろうか。
設置場所については、ベルリン都市州公式サイトでは「下水道が未整備の地域、例えば森林、公園」と記載されている(出所:ベルリン州州政府環境、交通及び気候保全局ホームページ)。
記事では、あたかも「全市に設置を検討中」という印象だったが、実はそこまでではなかったようである。そもそもこの記事の約2週間前に、同氏はベルリン市議会の文書質問への回答ではっきりと述べている。
費用については、従来の完全自動式(清掃も自動)の公衆トイレに比べて「寿命は10年と明らかに短く」「運用コストも良くて同等、さらに高額になることもある」と、「経済面での利点がほとんどない」と自ら認めている。当時の設置場所についても、「緑地帯」にわずか合計5基とのことであった(出所:Stiftung Naturschutz)。
コンセプトとしては面白いが、そもそも全市へ導入に適した方式ではなさそうである。ここで政治に目を向けると、同州では野党であるキリスト教民主同盟(CDU)は、前述のKirchner氏のコンセプトを「ぼっとん便所」と評し、大反対の立場であった(出所:CDU)。
上記サイトの極めて批判的な内容をつぶさに見ると、実は公衆トイレの運営業者問題と関わっているようである。当地では公衆トイレは民営化の一環で、屋外広告の大手Wall社が全自動ハイテクトイレ(個室でバリアフリー)を設置、運用している。利用者負担は20分でわずか50セントほどだが、同社は壁面の掲示スペースから広告料を得ている。しかしその利益が不透明であることを理由に、州政府から契約を解除されたのである(出所:Deutschlandfunk)。