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治水政策における連邦政府の権限が強化?

2006 年9月1日、連邦と州の権限見直しを柱とした包括的連邦制改革に伴う基本法改正法、及び同改革に伴う法律が発効した。改革実現に必要であった基本法(憲法)の改正は戦後最大規模となった。連邦制改革は、複雑に絡み合った連邦と州の所轄権限を整理し、立法の迅速化を目指す。連邦参議院の承認を必要とする法案の範囲を見直すことで、相対的に連邦議会の権限 が強まった。

連邦参議院(定数69)は、各州政府が任命する代表により構成され、州政府首相が1年交代で議長に就任。州政府の意向が連邦の立法過程に強く反映される。社民党(SPD)と緑の党の連立による前政権時代には、州議会選での与党敗北が続いた結果、連邦参議院で法案が阻止される事態が相次いだ。

今回の改革は、保革2大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と 社民党による大連立政権が成立したことで可能となった。 歴代政権の懸案だった環境法典プロジェクトも、こうしてその実現が可能となった

ドイツ連邦議会第16会期(現行会期)における環境法令統合のための環境法典プロジェクトの実現

本テーマは、90年代の保守・リベラルの連立政権を含む過去の歴代の政権において公約されてきたものである。1998年以降の社民党と緑の党の連立政権時期に起草され、まさに現実のものになるかにみえたが、一部の環境立法に関する連邦・州の管轄権を巡る憲法上の問題で棚上げされた。すなわち、水管理と自然保護の分野において、連邦は大綱や原則を定める権限しかなく、細則を定める権限が州にあったことから、環境法典(Umweltgesetzbuch)を編纂し、連邦がこれら分野において詳細に定めることは、憲法の改正なしには不可能であることが明確になったためである。

キリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟CSUおよび社民党(SPD)の現大連立政権は、憲法を改正するだけの2/3の多数を連邦議会において確保できることから、同政権は連邦制の改革や環境法典の編纂を連立協定の内容とした。また両党は、州政府の代表から成る連邦参議院でも2/3以上を占める。

数年に亘る(前政権時から)連邦制改革調査委員会の作業を基礎に、連邦制改革法案/基本法(憲法)改正法案が、5月に開催された専門家・関係者の公聴会を経て、去る6月に両院で可決された。環境分野においては、水管理・自然保護に係る連邦の大綱的立法(基本法 第75条)が廃止され、水管理・自然保護は、連邦が細則まで制定できる競合的立法の対象となる。これにより、環境法典では、水管理・自然保護についても、廃棄物管理や大気保全の分野と同様に、連邦が規制できる憲法上の基盤が確保される。 連邦環境大臣は、この連邦制改革・憲法改正を受けて、長年の宿願であった環境法典の編纂をこの会期中に実現する旨を表明している。

大綱的立法の分野だった環境法に対し、実体的な逸脱立法(Abweichungsgesetz)が導入される(基本法第72条第3項)。つまり、州は州法によって、特定且つ明確に定義された連邦法に対し“介入”することが出来る。すなわち、当該ケースにおいて“連邦法は州法を破る”というルールは適用されない1)。つまり、州法の適用優位性がここに存在する。当該連邦法は、逸脱する法律を実際に制定しない、もしくは制定することが出来ない州に対しては依然として効力を有する。

これにより、法律の分散化が起きる可能性がある。この逸脱立法によって、州が当該分野で独自の権限を有するために、連邦にとって、連邦参議院の同意を得ることなしに権限を維持、あるいはさらに整備(強化)できるという機会が生まれたことになる。

環境法のいくつかは、逸脱立法 (州の逸脱権利を伴う競合的立法権)として分類され、その他の分野は競合的立法に属する。したがって連邦は、各分野(以前は大綱的立法の分野であった自然保護、水管理、土壌関連)において競合的立法権を有すことになる。テーマによっては、この競合的立法に州の逸脱権利が伴うことになる。これは、環境分野における全てのEU指令を、連邦が国内法として整備することを可能とするものである。従来は、大綱的立法の分野ではその法制化は各州の所轄であったため、実施において遅れが生じる可能性があった2)

Verteilung der Gesetzgebung

おわりに

以上を水管理に関して要約すると、廃止される前の大綱的立法では、連邦は枠組みを決め、州は細則を定めていたが、競合的立法に移行した現在、連邦は枠組みだけでなく、細則も決められることになる、従って水管理(治水政策)においては、権限が強化されたと言えよう。しかし、この競合的立法には、州の逸脱権利も認められているので、どれだけの州が逸脱権利を行使するかは今後の様子を見ないとわからない。仮に逸脱権利を行使する場合も、自然保護と水管理の領域であり 、どの程度逸脱できるかは、EU指令法制化(FFH指令、水枠組指令、洪水防御指令)との関わりもあるので限られるであろうという見方もある。

1) 但し、水法における特定物質及び設備に関連する規則や自然保護の基本事項等の主要分野においては、連邦法が優先する。

2) 現実に州(ニーダーザクセン)によって水枠組指令(WFD)の実施が遅れ、EUより制裁金が課せられたことがあった。

最終変更日時 2008年9月3日7:06 PM