ドイツのバイオ燃料割当法について
ドイツの石油業界に対して、2007年1月1日より、年間の軽油及びガソリン販売量のうち、一定量のバイオ燃料(DIN EN 14214に基づくバイオディーゼル)を段階的に導入することが義務付けられた。バイオディーゼルのエネルギー含有量(発熱量:MJ/l)をベースとした軽油への割当率(=最低混合率)は、2007年から2015年まで4.40%と一定で、これは容量ベース(Vol%)だと4.83%(4.40%×軽油の発熱量35.87MJ/l÷バイオディーゼル発熱量32.65MJ/l=4.83%)に相当する。
一方、バイオエタノールのガソリンへの割当率は段階的に増加しており、ドイツ政府の積極的な導入政策が伺える。それぞれの割当率は第三者への移譲が可能であるが、遵守されなかった場合には、60セント/l(軽油と総割当)もしくは90セント/l(ガソリン)の制裁金が課せられることとなっている。
また、2009年以降は、軽油、ガソリンへの割当率をそれぞれ満たしつつ、さらに軽油及びガソリン全体に対する総割当率(Gesamtquote)も満たさなくてはならない。
年 | 総割当率 | 軽油への割当率 | ガソリンへの割当率 |
2007 | 4.40%(4.83Vol%) | 1.20%(1.85Vol%) | |
2008 | 4.40% | 2.00% | |
2009 | 6.25% | 4.40% | 2.80% |
2010 | 6.75% | 4.40% | 3.60% |
2011 | 7.00% | 4.40% | 3.60% |
2012 | 7.25% | 4.40% | 3.60% |
2013 | 7.50% | 4.40% | 3.60% |
2014 | 7.75% | 4.40% | 3.60% |
2015 | 8.00% | 4.40% | 3.60% |
計算例
以下に、2015年の総割当率(8.0%)とバイオディーゼル(4.4%)及びバイオエタノールの割当率(3.6%)を例にとって、具体的に説明する(軽油及びガソリンを100,000リットルとした場合のそれぞれのエネルギー含有量をベースとする)。
軽油 | 100,000 リットル |
軽油のエネルギー含有量 | 35.87MJ/リットル |
軽油の総エネルギー(①) | 3,587,000MJ |
軽油への割当率(②) | 4.40% |
バイオディーゼルのエネルギー含有量(③=①×②) | 157,828MJ |
ガソリン | 100,000リットル |
ガソリンのエネルギー含有量 | 32.48MJ/リットル |
ガソリンの総エネルギー(④) | 3,248,000MJ |
ガソリンへの割当率(⑤) | 3.60% |
バイオエタノールのエネルギー含有量(⑥=④×⑤) | 116,928MJ |
軽油とガソリンの総エネルギー合計(⑦=①+④) | 6,835,000MJ |
2015年の総割当率(⑧) | 8.00% |
バイオ燃料の総エネルギー(⑨=⑦×⑧) | 546,800MJ |
※バイオディーゼルのエネルギー含有量(③) | -157,828MJ |
※バイオエタノールのエネルギー含有量(⑥) | -116,928MJ |
補填すべきバイオ燃料(⑨−③−⑥) | 272,044MJ |
軽油100,000リットルに含まれるエネルギーは、3,587,000メガジュールであり、そのうち、バイオディーゼル割当率4.4%に相当するエネルギーは157,828メガジュールとなる。
ガソリン100,000リットルに含まれるエネルギーは3,248,000メガジュールであり、そのうち、バイオエタノール割当率3.6%に相当するエネルギーは116,928メガジュールとなる。
軽油+ガソリンの総エネルギーは、3,587,000+3,248,000=6,835,00メガジュールとなるので、そのうち、総割当率8.0%に相当するエネルギーは546,800メガジュールである。
従って、この546,800メガジュールからバイオディーゼルとバイオエタノールのそれぞれのエネルギーを引くと、546,800-157,828-116,928=272,044メガジュールの不足分が出てくる。
総割当率を満たすためには、この不足分をバイオディーゼルもしくはバイオエタノールで補填しなければならない。
現行のバイオ燃料割当法(Biokraftstoffquotengesetz)は、以上のような仕組みになっているが、不足分のバイオ燃料(バイオディーゼル、バイオエタノール)は、市場価格の安い燃料によって補填されると推測される。バイオエタノールは、割当率が段階的に引き上げられているため、短期的には消費量は伸びるが、2015年にはガソリン消費量が減るであろうと予測されているので、中期的にはバイオディーゼルの量が増える可能性があるといえる。