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ドイツにおける輸送用バイオ燃料の動向

バイオ燃料市場(Biokraftstoffmarkt)は、ここ数年の間に経済及び政治において大きく取上げられるテーマとなっている。バイオ燃料はドイツにおける再生可能エネルギーの主流であり、特にバイオディーゼルは軽油市場の1割以上を占めるなど既に国民生活にも浸透している。

一方、2020年までに輸送用燃料市場の17% をバイオ燃料で代替する目標が最近になって12%へ下方修正が検討されるなど、バイオ燃料をめぐる政策には、環境に対する相対的な影響と消費者にとっての経済性、利便性を天秤にかけた議論も存在する。輸送用バイオ燃料の代表であるバイオディーゼルとバイオエタノールの現状を中心に、ドイツのバイオ燃料市場は今後どのように展開していくであろうか、その動向を概観する。

再生可能エネルギーとしてのバイオ燃料の位置づけ

ドイツの最終エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合は8.5%で、この内バイオエネルギーが3分の2を占めている。再生可能エネルギーに占める輸送用バイオ燃料は20%である。ちなみに、バイオ熱エネルギー及びバイオ電力の割合が高いのは、再生可能エネルギー法に基づく優遇措置、特にバイオマスによって生産された電力を電力会社が固定価格で買取り補償することが規定されているからである。新再生可能エネルギー法では、バイオマス発電の買取り価格はさらに引き上げられている。
Biokraftstoffanteil


図1 再生可能エネルギーの内訳

バイオディーゼル

輸送用バイオ燃料の一つである、バイオディーゼルにおいて、ドイツは世界最大の生産国であり、2005年には世界の総生産量半分以上を生産している。ここ数年、バイオディーゼルの生産及び販売量がドイツで急増した要因として、鉱油税の免税措置によって軽油よりバイオディーゼルの価格が政策的に低く抑えられてきたこと、さらに2004年からは、ディーゼル規格DIN EN590に基づき、バイオディーゼルは軽油に5%(Vol%)まで混合できるようになり、生産設備の容量がそれに伴って大幅にアップされたことが挙げられる。その結果、90年代に小規模な施設で生産開始されたバイオディーゼルは、現在、年間生産容量が約350万トンと増加し、年間3000万トンの軽油消費の内、ほぼ11%がバイオディーゼルによってカバーされることになった。

ドイツは日本にくらべてディーゼル乗用車が4台のうち1台の割合で広く普及し、軽油消費量はガソリン消費量を上回っている。バイオディーゼル(B100)は、全国のガソリンスタンド14,659の内、約1900箇所で市販されているので一般市民の利用も多いが、主にタクシーやバスなどの公共交通車両や民間の送迎車、そして長距離輸送車両や大型トラック、建設用や農業用とさまざまな分野の車両で幅広く使われている。これは、上述したように同燃料の普及を目的に、免税措置がとられていたためである。

Biokraftstoffnutzer

図2 バイオ燃料の利用者

しかし、バイオ燃料市場が成熟した現在、過剰補償であるという議論を背景に、同燃料は2006年8月1日に発効したエネルギー税法によって課税対象となった。割り当て量を勘案したB100の1リットル当たりの税金は9セントで始まり、2007年は8.86セント、2008年14.88セント、2009年21.41セントと段階的に引き上げられ、2012年以降は45.06セントとなる。現在の軽油税は47.04セントで、市販されているバイオディーゼルの今年の税金14.88セントを比較すると、ガソリンスタンドにおいて20~25セントほどの価格差があっても不思議ではない。しかし、ベルリン郊外の例を挙げると、軽油130.9セント、バイオディーゼルは122.9セントで10セント程の差しかなく、今後税率が引き上げられるに従い、バイオディーゼルの小売価格が軽油を上回る可能性もある。このような背景もあり、バイオディーゼル のガソリンスタンドにおける販売量は、2005年をピークに本年2月まで毎年減少傾向を見せている。

バイオエタノール

もう一つの輸送用バイオ燃料であるバイオエタノールにおいては、ドイツはEUの中で最大の消費国であるが、バイオディーゼルほど普及していない。同燃料は、現在Bio-Super 及びCropPower85(バイオエタノール85%とガソリン15%)の名前で約70のガソリンスタンドでしか市販されていない。バイオエタノールの課題として、第一に、エンジンがエタノール仕様でなければならないことが挙げられる。現在、フォード、サーブそしてボルボ社が、当該エンジンを搭載した車両(FFV:フレキシブル・フーエル・ヴィークル)を販売しているのみである。また導入が予定されていたガソリンへのバイオエタノール10%混合(E10)の義務化についても、輸入車や古い車両の多くが対応できる仕様になっていないことが判明したため撤回された経緯がある。

第二に、ガソリンに比べて燃費効率が劣るため、税金の優遇措置を差し引いても、経済性で劣ることが挙げられる。エタノールのエネルギー含有量は、ガソリンと比べると35%少ないため、燃費で比較すると1/3ほど悪くなる。E85およびE50の平均小売価格は、リッター当たり82から98セントである(ちなみに、エタノールは、2009年まで免税対象)が、価格をエネルギー含有量で比較した場合、リッター当たり120から130セントとなり、走行距離20,000kmでのスーパーガソリン(ハイオクガソリン)との価格優位差はわずか350ユーロにしかすぎない。ガソリン燃料に比べて経済性や利便性で依然として課題を抱えている。

一方、2007年におけるバイオエタノールの消費量46万トンの内、約80%はオクタン価(耐ノッキング性)を高めるためのガソリン添加剤であるETBE(Ethyl-Tertiär-Butyl-Ether)の生産に使用され、約18%が混合用で残りが前述のE85として消費されている。DIN EN 228ではガソリンへ15%までのETBEまたは5%までのエタノール(E5)の混合が規格化されている。また、エタノールを軽油に混合すると微小粒子成分(fine particle)が低減されるといわれ、米国やブラジルではすでにこの種の車両が出回っている。

その他のバイオ燃料

バイオメタンは、バイオ燃料割当法の適用外であり、現在約770のガソリンスタンドで市販されているが、まだニッチな市場である。将来この割当法が適用され、税制優遇措置が2020年まで延長されると、自動車業界にとって刺激になるであろうといわれている。2008年3月12日には、バイオ(メタン)ガス供給事業者が天然ガス供給網にアクセスできるよう法制化された(ガス供給網アクセス令)。現在、ガソリンスタンドが毎年減少している中、天然ガス供給スタンドの数は増加している。

バイオ燃料割当法

石油業界は、2007年1月1日より年間の軽油及びガソリン販売量の内、一定量のバイオ燃料 を段階的に導入することが義務付けられた。バイオディーゼルのエネルギー含有量をベース(発熱量:MJ/l)とした最低割当率は、2007年において4.40%、これは容量ベースだと4.83%(4.40% X 軽油の発熱量 35.87 MJ/l÷バイオディーゼル発熱量 32.65MJ/l=4.83%)に相当する。バイオエタノールの割当率は、段階的に増加しており、ドイツ政府の積極的な導入政策が伺える。割当率は第三者への移譲が可能であるが、遵守されなかった場合には、60セント/l(軽油と総割当)もしくは90セント/l(ガソリン)の制裁金が課せられる。また、2009年以降は、軽油、ガソリンへの割当率をそれぞれ満たしつつ、さらに軽油及びガソリン全体に対する総割当率(Gesamtquote)も満たさなくてはならない。

表1 現行のバイオ燃料割当法

総割当率 軽油への割当率 ガソリンへの割当率
2007 4.40%(4.83Vol%) 1.20%(1.85Vol%)
2008 4.40% 2.00%
2009 6.25% 4.40% 2.80%
2010 6.75% 4.40% 3.60%
2011 7.00% 4.40% 3.60%
2012 7.25% 4.40% 3.60%
2013 7.50% 4.40% 3.60%
2014 7.75% 4.40% 3.60%
2015 8.00% 4.40% 3.60%

第二世代バイオ燃料

2007年8月、ドイツ政府は、地球温暖化対策として29項目からなる「気候・エネルギーパッケージ(気候・エネルギー統合政策)」を打ち出し、積極的に気候変動やエネルギー問題に取り組んでいる。エネルギー総量の中のバイオ比率を上げさえすればいいといった第一世代バイオ燃料の時代から、バイオ燃料の原料の確保が食料価格の高騰や森林伐採など環境へ影響を及ぼしているといわれている中、ドイツ及びEUは環境や社会に影響を与えず、かつ温暖化効果ガスの排出バランスを考慮した、第二世代バイオ燃料(例:液化バイオマス合成燃料など)の促進および生産を法制化しようとしている。具体的には、連邦政府が2007年12月5日に決議し、EU委員会へ提出した“バイオマスの持続的な生産の証明に係る法令案(Nachhaltigkeitsverordnung)” であるが、委員会ではEUで統一された制度を検討しているため(EUの持続性証明制度)、ドイツの当該法案は本年12月まで保留となった。

おわりに

バイオ燃料割当法の導入や段階的に税金が課せられることによって、ドイツのバイオ燃料政策は、税制優遇から使用を義務づける方向に転換している。つまり、消費者の負担になるわけであるが、軽油価格の変動が今後のバイオディーゼルの販売量に大きく影響してくるであろう。バイオエタノールについては、輸送用バイオ燃料中の消費率がトップであるスウェーデンやフランスに遅れているドイツは、前述の割当法をもとにバイオエタノールを政策的に増やそうという意図がうかがえる。また、セルロース系バイオ燃料の開発も積極的に支援され、一部では商用プラントとの建設まで行われている現在、今後の行政や自動車業界の対応に関心が集まるであろう。

消費者にとっては、環境意識もさることながら、やはり燃費、エンジンの耐久性や性能が気になるところである

【参照】:油脂およびタンパク質作物促進連合会(UFOP: Förderung von Oel- und Proteinpflanzen e. V)資料、バイオディーゼル品質認証機構(AGQM;Arbeitsgemeinschaft Qualitätsmanagement Biodiesel e.V.)資料、ADAC統計、連邦環境省資料、デュッセルドルフ日本商工会議所(Japanische IHK zu Düsseldorf e.V.) 会報2008年8月号掲載記事

最終変更日時 2008年9月5日7:26 PM